の第一印象?
1番最初に会ったのは・・・3つくらいだったかな?
小さな手で俺の手をギュッと握って笑ってくれたその笑顔、今でも覚えてる。
小さな野花が咲いたような、そんな可愛い笑顔の女の子だったよ。
今はどう思ってるか?
・・・鉄砲玉、とは言わないか。
ブーメランみたいに何処かへ飛んでいっちゃうけど、最後には必ず帰ってくる。
それが分かってるのに目が離せない、誰よりも気にかかる・・・女の子だよ。





「え?」

隊長へ本日の報告を終えて部屋を出ると、ずっと気に掛けて探していた少女が目の前にいた。

「あ゛っ゛」

如何にもまずいと言う顔をした白衣を着た人物は手にしていた箱を床へ落とし、そのまま踵を返してその場から逃げ出した。



まさか・・・こんな所にいるワケ無い、だってここは・・・ここは・・・ザフトだぞ!?



そんな事を思いながら数メートル先を白衣を翻しながら逃げていく人影を追う。
わざわざあちこち回り道をしてこちらを惑わそうとしている事から、つい最近この艦に乗り込んだと言う訳じゃない事が分かる。
ここは案外入り組んだ造りだから新人のうちは、地図を持ち歩かないとすぐに行き止まりにぶつかってしまう事が多いからだ。










やがて艦の下層部分までやってきて人気が無くなった直線通路で、俺は前を走る人物の名前を呼んだ。

!」

ずっと探していた、行方を気にしていた子の名前。
声が聞こえないのか、それとも・・・人違いか。
いや、俺がを間違うはずはない。

!待て!俺だ、アスラン・ザラだ!!」

先程より大声で名前を呼ぶと、微かに肩を震わせて足が止まった。
それを確認すると同時に俺は一気に走り寄り彼女の手を掴んだ。

!」

「あ、ち、違います。ぼ・・・僕は・・・」

俯いて必死に俺から顔を反らしているけれど・・・やっぱり、そうだ。
胸に込み上げる嬉しさが堪えきれず、俺は目の前の人物の体をギュッと抱きしめた。

「俺がを間違える訳無いだろ?」

キラ同様幼い頃いつも俺の側にいた、隣に住んでいた二つ年下の女の子。
泣き虫で、甘えん坊で、ちょっと気の強い・・・でもとても優しい










俺がキラやと別れてプラントに移住して数ヵ月後・・・の家族もプラントへやって来た。
以前のように隣同士にはなれなかったから毎日会う・・・と言う訳には行かなかったけど、同じプラントで生活をしていたから結構マメに会っていたと思う。
でも1年後くらいにはやりたい事を見つけたと言って、両親を説得すると医療の学校へ編入、俺に何の相談も無くそのまま寮へ入ってしまった。
会えなくなった分メールや手紙でお互いの近況を報告したりしていたんだけど、俺が軍に入る直前に送ったメールを最後に・・・彼女から返事が来なくなった。最初は体調でも崩したのかと思っていたが、長期間何の連絡も無かったので学校へ問い合わせてみてもは卒業した・・・としか教えて貰えず全く行方が分からなくなってしまった。
そう言えば戦争が始まる前の休暇の時は、心当たりをあちこち探しに出かけた事もあったよな・・・。



「・・・ア、アスラン・・・痛い。」

「え?」

知らないうちに抱きしめる腕に力が入ってしまったのか、腕の中のが苦しそうに眉を寄せていた。

「ご、ごめん。」

慌てて手を緩めると、は俺から一歩離れて小さな呼吸を数回繰り返した。
やがて落ち着いたがゆっくり顔を上げて俺を見た。
昔と少し違う、大人びた表情だったけど海や空を思わせる青い瞳の色だけは昔と全然変わってない。

「・・・アスラン。」

「やっぱり。」

「うん。」

コクリと頷いたの頭を抱えてもう一度胸に抱き寄せた。
その存在を体で確かめるかのように・・・。

「心配した。」

「ん」

「色々話したい事も、聞きたい事もある。」

「僕も・・・」

僕?そう言えばさっきもは自分の事を僕って言ってたな。
ハッと気づいての体を俺から引き剥がすと、頭から爪先まで間違え探しでもするかのように視線を走らせた。



ちょ、ちょっと待ってくれよ・・・一体コレはどう言う事だ!?



・・・今から俺の部屋に行こうか。」

「え?今から?」

「うん、今すぐ聞きたい事が出来たから。」

「ア、アスラン?」

小さい頃から俺の側にいただから、今俺がどれだけ怒ってるか分かってるだろう?
俺はの手を引きながら人目がつかない最短ルートを辿って自分の部屋まで戻ってきた。
この時間、同室のラスティは自習室でプログラミングを解いているので暫くは戻ってこない。
それでも用心の為部屋への入室パスワードを変更してロックを掛けた。



これで・・・この部屋には誰も入れない。










俺はへ椅子を差し出して座らせると、自分はベッドに腰掛けて足を組んだ。

「俺が何を言いたいか、分かる?」

「・・・何となく。」

「じゃぁ教えてくれる?どうしてがザフトにいるのか、しかも・・・性別を偽証して入隊しているのかを。」

そう、が着ている軍服は緑、そしてその上に白衣を羽織った状態だ。
そこまでは問題ないが、胸に着けているIDカードの性別と身につけている軍服が男性物だと言うのが一番の疑問。

と連絡が取れなくなって俺がどれだけ心配したか分かってるのか?」

「・・・」

「連絡が取れなくなってすぐに血のバレンタインが起きて・・・そこにのご家族の名前があって、でもの名前は無かったからずっと探したんだぞ?」

「・・・」

はさっきから俯いたまま言葉をひと言も発しない。

「今迄どうしていたんだ?俺には・・・言えないのか?」

「・・・」

は・・・意外と頑固だったりする。
普段は凄く素直で、何でも話してくれるけれど心の奥底にある事を声に出すのは俺と同じであまり上手くない。
そんな昔と変わらないの態度を懐かしみながらも、ベッドから立ち上がると椅子に座って俯いている彼女の顔を覗きこむようにしてしゃがみ込んだ。もう一度声を掛けて訊ねようとしたそんな俺の目に映ったのは・・・瞳から次々零れ落ちてくる、涙。

・・・」

「・・・たかった。」

「え?」

「アスランの為に、何か・・・
したかった。

「・・・。」

「僕の力じゃMSを動かす事もそのサポートをする事も出来ない!アスランの側にいても邪魔になるだけで何も出来ない!!だから最初は遠くでサポートしようと思った・・・でも一人だけ安全な所にいるのがイヤだった!
どんな所でも、アスランの側に来たかった!!!

涙でくしゃくしゃになった顔を上げて、俺の服をギュッと掴んで言葉をつむぐ。

「父さんも母さんも・・・アスランのお母さんも友達も、皆あの日に死んじゃった。」

あの日・・・それは誰もが口を噤んでしまう、血のバレンタインの惨劇。

「あたしは友達に呼ばれて・・・そこでニュースを見て聞いた。あの時、大事な物を全部亡くしちゃった・・・アスランがくれた絵本も、人形も手紙も・・・そして・・・・・・ハロも・・・」

・・・・・・」

心から搾り出されるように泣き叫ぶの思いはとても大きくて、それを全て受け止めるように俺は両手を広げての体を抱きしめた。

「アスランが軍に、ザフトに入隊する事聞いて・・・どうしても側に、来たかったの。」

そっと俺の背中に回されたの手が、二度と俺から離れないとでも言うように力強く服を握る。
の思いは嬉しいし、こうして会えた事も不謹慎だが喜ばしい事だ。

だが・・・しかし・・・・・・

「でも、君は
女の子なんだよ?」

俺が1番言いたいのはこのひと言。
名前だけはそのままだけれどIDカードの性別はしっかり男と記載されていて、着ている軍服も恐らく1番小さい男性の物。
最後に会った時には願を掛けていると言う腰まであった長い髪も、今ではイザークとほぼ同じ長さと言ってもいい。
それを無造作にゴムでまとめて結んでいる。
口調も以前の可愛らしい口調とは全く違う、どちらかと言うと・・・幼い頃の俺やキラのような口調に近い気がする。

「それにどうやってここに・・・」

俺に嘘をつけないと悟ったは、手の甲で目元をゴシゴシ擦りながらたどたどしく言葉を紡ぐ。

「ある人に・・・協力、して貰ったの。」

「ある人って?」

「・・・・・・」

「怒らないから言ってごらん。」

「・・・驚かない?」

がここにいる事以上に驚く事なんて無いだろう?」





そう思っていた俺は、予想以上に自分の周りの交友関係の狭さに驚いた。
驚愕の事実に思わずにその名を何度も繰り返して聞くほどに・・・

、もう一回・・・聞いてもいい?」

「だから・・・ラクス・・・」

「え?」

「ラクスがあたしをここに男性として入隊させてくれたの。」

「何だって!?」

ようやく脳へたどり着いた事実は、思ったよりも心臓に悪かった。
自らの婚約者でもあり、どうやらの友人でもあるらしいラクスの手によって女性の身でありながら男装させてを単独で軍へ入隊させるなんて事、そう簡単に出来るはずが無い・・・無いはずなんだけど、ラクスなら出来るかもしれないと思わず思ってしまった。
くらくらする頭を抱えながら必死に今までの事実を繋ぎ合わせていく。

「だから口調も変えて・・・」

「うん!アスランと同じv」

「同じって・・・」

そんな泣き腫らした目で、一生懸命笑顔を作られたら・・・もうこれ以上何も言えないじゃないか。

はぁ・・・と大きなため息をついて、それでも手を伸ばせばがいると言う事実に今は全て目を瞑ってしまおう。
ずっと探していた少女が、状況はどうあれ今は自分と同じ場所に・・・目の届く所にいる。
それだけで俺の中の不安は減少するから、だからもう俺から逃げないで。





が見つかってホッと安心したのも束の間。
彼女が男装していると言う事実が、次々に俺の不安材料になって行って・・・部屋の配置換えをクルーゼ隊長に希望したり、身につける衣類を俺の認識コードを使ってラクスに頼んだり、小まめにの様子を覗きに行ったり・・・と、俺の苦労はまだまだ終わらない・・・らしい。





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第一印象、アスラン編
そしてこれで第一印象全て終わりです!
無事全員書けるかどうか不安でしたが、何とか全員終わりました(ホッ)
本当はラスティの事もチラリと考えたんですが、あまりにもわからない事が多すぎたので止めました。
また連載でも初めて、何か思いついたら書くことにします(笑)
さてさてアスランは、今後多大な苦労をする事になります(決め付け!?)
取り敢えずラスティがいる間は最寄の空き室をヒロイン用に空けて貰って、しょっちゅう様子を見に行く事になるでしょう。
(第一印象以外ではもうアスランと同室になってるんですが・・・まぁそれはその・・・気にしないって事で(笑)←ラスティに変わってもらったのかなぁ(苦笑))
彼女はアスランが初めて女の子と意識して扱ってる子ですからね・・・目の中に入れても痛くないでしょう。
って言うかアスランなら本当に目の中に入れそうで怖いです(苦笑)
そして怒らせてはいけない人、ですね。
さぁーて、次はSEED何書こうかなぁ〜♪